いい出逢いは、心がふくらんでくる。

コトバがココロに刺さった時。

 「お連れの女性が、不愉快になられないこと。その上、その方のお声がいつもより明るくなっていれば、これ以上、言うことナシです」。との会話に、冬のどんより曇っていたマナコが、一瞬、???と興味の淵へ誘い込まれてしまう経験をしました。

 コトバって、ヒトのココロを動かせる最大の武器ではなかろうか。例えば、店頭で、どんなにその商品の利点や、「似合いますよ・・」などのセールストークを流し込まれても、自分がその商品に若干の興味があり、その商品の説明に心の底からの納得がなければ、ココロが動かない。

慣れない行為には、練習が必要です

 2020年の春の頃から、秋になったらハットをかぶって渋いオジサンになるのも面白そうだな〜と、思いはじめました。そこで、事務所の近くにあるY帽子店に行き、ハットを身体に馴染ませることにしました。初夏の頃でしたから、白いパナマハットを手に入れ、イタリア男になる練習を始めた次第です。
 最終的には、秋冬に黒いフェルトを目深にかぶりたい訳ですから、パナマハットはあくまでも立ち居振る舞いに慣れるためのウォーミングアップの役目なのです。
 一応、周りの人々からの忠告や、ワルクチを聞き、頭の機嫌もハットというものに慣れてきて、やはり、ボルサリーノ( イタリアの有名な帽子会社 )が、馴染むな〜との結論と、経験も積みました。しかし、2020年の秋冬には好みのフェルト帽が見つからず、やっと、21年の冬、好みのモノを見つけることができました。思いたった時から1年半が経とうとしていました。

自信が表に出てくると、強いメッセージになる。

 コレダ!っと思っていたハットが、どのお店にもなく、やっと、ボルサリーノの直営店で、手に入れることができました。現在、日本にこの1点しか残っていなかったんですね。そのお店のTAさん( ボルサリーノ日本支社の方でした)が、冒頭の言葉を発した次第です。探していたタイプをやっと手に入れ、その時の気分の高揚感から「フェルトのハットをかぶるのは初めてなので、どのような時はダメで・・・というTPOを教えてチョウダイナ」と会話がはずみ、次に返ってきた言葉が、村中さんの場合ですと、・・・と、不思議な前置きがあり、「お連れの女性が・・・」でした。
 一般的な会話では「お食事の時とか、礼をつくさなければいけない場合とかは、帽子はとられた方が・・・」となるのが普通ですから、私も面白い感覚になり、なぜ、そんな会話になったのかを、詳しく聞いてみたくなりました。すると、「ボルサリーノが似合いそうな雰囲気でしたし、私もかぶっていただきたい、そして、村中さん流に飼い慣らしてくださるお方とお見受けしました。初対面のお方ですが、この会話の雰囲気が似合うのでは・・・と、思いました」と、次の矢が飛んできました。「余計な観察ですが、ブエノスアイリスでタンゴを踊っていらっしゃる映像ともダブりました」とたたみかけられました。シャレた会話の進め方だナ〜と感心しました。

いい出逢いがあると、次の何かが動きだす。

 このTAさんは、自分のところの商品に自信を持っていらっしゃる。その上、自分の感覚を信じているし、接客の間合いの取り方にも遊び心を持っていらっしゃる。相手の発する周波数を感じ、自分と相手との共鳴作用を楽しんでいらっしゃる。若いのに、ナカナカできる技ではないのになーと、その出逢いを、得難いものに感じました。
 
 今年からは、出逢いについて書きますネと、校友会の皆さんに公言しましたので、初っ端にTAさんとの出逢いを書かせていただきました。この出逢いは居合抜きで言えば、出逢った瞬間に勝負が決まる楽しい時間でした。当然、気がついたら私がバッサリと斬られていた気持ちの良い出逢いでした。TAさんとはそれから、友達付き合いをさせてもらっています。彼は52歳ということでした。瞬間で、間合いを計り、艶のある時間を
つくれる大人、ナカナカいませんが、年の初めからいい出逢いだったなーと、嬉しくなりました。世の中もいいもんですねー。

<校友会 SO-ZO-NE 会長 村中 凱>